探偵は、「浮気調査」「人探し調査」などで人々の問題を解決へ向けてサポートしています。しかし、尾行や盗撮をする探偵はそもそも違法ではないのでしょうか。
当記事では、探偵の業務が合法的に認められている理由と、探偵でも違法になる調査内容について解説します。探偵に調査を依頼しようか迷っている人は、最後まで読んで参考にしてみてください。
探偵の調査が違法ではない理由
「尾行」「張り込み」「写真撮影」をしても、正当な調査理由がある限りは合法です。「探偵業の業務の適正化に関する法律」というものが定められているので先述の調査行為は合法とされています。それではそれぞれ合法の理由を解説していきます。
「探偵業法」が定められている
探偵が業務を適正に行うために「探偵業の業務の適正化に関する法律」(通称:探偵業法)が定められています。探偵が業務を行う上でちゃんと調査ができるように定められた法律です。
公安委員会から「探偵業届出証明書」が交付された探偵であれば、基本的な探偵業務は合法となります。
しかし、下記に該当する方は探偵業ができません。
(欠格事由)
電子政府の総合窓口e-GOV(探偵業法)
第三条 次の各号のいずれかに該当する者は、探偵業を営んではならない。
一 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
二 禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して五年を経過しない者
三 最近五年間に第十五条の規定による処分に違反した者
四 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第二条第六号に規定する暴力団員(以下「暴力団員」という。)又は暴力団員でなくなった日から五年を経過しない者
五 心身の故障により探偵業務を適正に行うことができない者として内閣府令で定めるもの
六 営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者でその法定代理人が前各号又は次号のいずれかに該当するもの
七 法人でその役員のうちに第一号から第五号までのいずれかに該当する者があるもの
よって、公安委員会により認めらた個人・法人のみが合法の範囲内で調査業務を行えることになるのです。
「探偵業法」違反は行政処分を受ける
行政処分は「指示」「営業停止命令」「営業廃止命令」があり、行政処分を受けると警視庁のホームページで3年間公表されます。また、違法内容によっては探偵自身が懲役や罰金などの刑事罰が科せられるため、違法行為によるリスクは非常に大きいといえるでしょう。
「探偵業法」やその他の法律に違反した調査を行った場合、探偵や探偵事務所は厳しい処分を受けます。公安委員会から認められている探偵であっても、違法行為を行えば処罰の対象になるのです。
合法になる探偵調査
探偵は「探偵業法」に守られており、基本的な調査業務は合法です。しかし、行き過ぎた調査は違法になります。
- 尾行・張り込み・聞き込み
- 証拠写真や動画の撮影
- 家族の協力によるGPS情報取得
では、探偵はどこまでの調査がどこまでが合法なのでしょうか。探偵が合法的に行える調査方法について解説します。
尾行・張り込み・聞き込み
「探偵業法」で合法と定められているのは「尾行・張り込み・聞き込み」による調査です。探偵の「尾行・張り込み」は感情が伴わない状況で行われるため、ストーカー規制法には該当しません。
「聞き込み」は探偵が身分を明かして行う場合もありますが、身分を隠して行うことも可能です。
証拠写真や動画の撮影
探偵が「尾行・張り込み」を行いながら証拠写真や映像の撮影を行うことも合法です。例えば不倫調査の場合、不倫という行為自体が不法行為に該当するため、その証拠として撮影することは正当な理由があるとみなされます。
不倫相手から「プライバシー権の侵害」などで訴えられても、探偵の調査が罪に問われることはありません。
家族の協力によるGPS情報取得
探偵が無許可で他人の所有物にGPS端末を仕掛けるのは違法。しかし「家族」が「共有財産」に「自らの意思で仕掛けたGPS端末」の情報を、「許可を得て」探偵が調査に使用することはできます。
例えば妻が「自家用車」にGPS端末を仕掛け、夫が車に乗って出かけたときに送信されたGPS情報をもとに追跡を行うことは合法です。
探偵の調査で違法に当たるケース
探偵だからと言って、どのような調査でも許可されているわけではありません。多くの探偵は合法の範囲で業務を行っていますが、探偵の中には違法行為を行う悪徳業者もあるので注意が必要です。
探偵が調査中に犯してしまう法律違反はどれも法律に基づいた犯罪行為です、探偵業法とは言っても、全ての行為が可能となるわけではありません。
執拗なつきまとい行為
基本的な「尾行」「張り込み」による調査は合法ですが、執拗なつきまといによりターゲットに気付かれ、処罰される場合があります。度を過ぎた調査により他人に迷惑をかける調査は違法行為とみなされてしまいます。
住居侵入
調査に熱中しすぎて他人の敷地に侵入したり、浮気相手の部屋番号を特定するためにマンションに忍び込んだりした場合「住居侵入罪」に該当します。マンション内の駐車場やごみ置き場であっても、無許可で侵入して撮影するのは違法です。
脅迫
過去には、ターゲットに直接連絡して「浮気をバラす」と脅迫した探偵が有罪になったケースもあります。浮気・不倫調査 に多く、秘密をもとに金銭を要求してくる悪質な探偵が存在するので注意が必要です。
不正アクセス
探偵であっても、ハッキングや不正アクセスによる調査は違法です。探偵に認められている調査は「尾行・張り込み・聞き込み」だけであり、無許可なデータ解析はできません。
調査以外の違法行為
探偵は、調査以外にも探偵業法違反で行政処分を受けることがあります。契約時の書類不備や従業員名簿の不整備、住所や電話番号の変更手続きをしていないなど、些細なミスも「探偵業法」違反となり行政処分の対象です。
書類不備などは警察による定期検査によって見つかることが多く、基本的には「指示処分」で済みますが、警視庁のホームページで3年間公表されるので営業には差し支えます。また、指示処分に従わなかった探偵事務所は「営業停止処分」「営業廃止処分」を受けることもあり、決して軽くはない違法行為です。
無届の探偵はそもそも違法
探偵業の開始届出を公安委員会に提出していない探偵は、そもそも違法です。届出をしないで探偵業を営んだ場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
悪徳探偵は違法調査や高額な請求(詐欺)、秘密を利用した脅迫などを行う可能性があるので非常に危険です。無届探偵であることが分かったら、どんなに条件が良くても絶対に関わらないようにしてください。
違法調査を犯した場合依頼者は逮捕される?
自分が依頼した探偵が、万が一違法調査を行って訴えられたらどうなるのでしょうか。では、探偵が違法調査したことで起こる影響について見ていきましょう。
依頼者は罪に問われない
探偵が逮捕されることはあっても、依頼者は逮捕されるなど、罪に問われることはありません。
ただし、依頼した探偵が逮捕されることでさまざまなトラブルが発生することは避けられません。ターゲットに調査依頼がバレたり、調査費用が無駄になったりするなど、トラブルが起こることは明確です。
探偵側が行政処分や刑事罰を受ける
探偵が違法調査を行ったことがバレた場合、探偵事務所は行政処分を受けることになります。行政処分の内容は「指示」「営業停止」「営業廃止」等の処分を受けることができます。
さらに、違法行為を行った探偵自身も逮捕され、懲役や罰金などの刑事罰が科せられるのです。これまで「住居侵入」「詐欺」等により探偵が逮捕された事例があります。
違法な探偵を見分ける方法
万が一のトラブルを防ぐため、違法営業を行っている探偵などを避けなければなりません。違法な探偵は、インターネット等で調べれば簡単に見分けられます。できるだけ依頼前に自力で調べて、違法な探偵には関わらないようにすることが大切です。
探偵業届出証明書を確認する
違法な探偵を見分けるなら、まずは公安委員会に届出をしている探偵かどうか確認しましょう。探偵事務所に訪問したときは、必ず見やすい場所に「探偵業届出証明書」が掲示されていることを確認してください。
訪問する前でも、探偵事務所のホームページの会社概要などに掲載されている「探偵業届出証明書番号」を見れば、届出をしている探偵かどうかわかります。営業所が複数ある場合、営業所ごとに「探偵業届出証明書番号」が割り振られていることを確認しましょう。
行政処分を受けているか確認する
違法行為により行政処分を受けた探偵事務所は、警視庁のホームページで3年間公表されます。
- 届出証明書番号
- 氏名または名称
- 代表者の氏名
- 主たる営業所の所在地
- 処分される営業所の名称と所在地
- 処分年月日
- 処分内容
- 処分理由・根拠法令
- 処分を行った都道府県公安委員会
上記のように詳細な情報が掲載されているので、依頼する予定の探偵事務所が行政処分を受けているかどうか必ず確認してください。
警察に問い合わせる
もっとも確実なのは、警察に問い合わせることです。インターネットで調べても不安な場合は、探偵事務所がある都道府県の警察署に問い合わせてみてください。
- 探偵業届出証明書番号は本物か
- 行政処分を受けているか
- 契約しても問題ないか
探偵を管理しているのは警察や公安委員会なので、問い合わせをすれば答えてくれます。不安を解消し、信頼できる探偵に調査を依頼しましょう。
探偵業法の下であれば違法行為にはならない
探偵が業務を適正に行うために「探偵業法」という法律が定められています。「探偵業法」が定める範囲の調査であれば、探偵の業務は合法です。
「尾行・張り込み・聞き込み」による基本調査や写真撮影などは、基本的に合法の範囲で行えます。しかし、探偵だからといって何をしてもいいわけではなく、執拗なつきまとい行為やハッキング等の行き過ぎた調査は違法になってしまうので注意が必要です。
探偵が違法調査を行い訴えられても、依頼者が罪に問われることはありません。しかし、ターゲットとのトラブルや金銭的被害が生じることは避けられるので、違法調査を行うような探偵にははじめから関わらないようにしましょう。
自力で調べて違法調査を行う探偵を見極めよう